STATEMENT




TERRAIN

 ある日小鳥を飼うことになった。
雛から育てたためとてもよく懐き、部屋にも放っていた。
障害物の多い部屋の中を、躊躇なくものすごいスピードで飛んでいる。
この時どのように世界をとらえているのだろう?

 数年前に、テレビのドキュメンタリー番組で飛行機墜落事故について特集していた。
詳しいことは忘れてしまったが、地面に近づきすぎてしまうと鳴る"TERRAIN"というアラート音がとても恐ろしかった。
自分の身体が地面(日常)から離れ、上空にあること。
そして墜落していくときに見える行き止まりの風景。
悲しい気持ちと同時に、感覚が刺激された。
 
 私はこういった感覚を掴みたいと思い、絵画という形式でできることを試みた。

2017
6月(個展"TERRAIN"について)





「制作のこと」

 さまざまな情報が素早く簡単に手に入る現代において、私は昔よりも物知りになったと思うが、同時に忙しくなった。一つの情報を立ち止まりじっくりと考える時間がない。
新しい情報が次々とやってきて、その忙しさについていくのに必死である。
自らの考えが形成される前に誰かの考えが入り込み、私は入手した情報をそのまま流すだけの機械のようになりつつある。
 そんな今、改めてシンプルな構造の絵画に救われる。なぜなら絵画の大きな構造は変わらず、ルール変更もなく、何百年前の作家とも数年前の自分とも、絵画の問題でコミュニケーションがとれる。
制作現場では時空を飛び越え、誰からも邪魔されずにひとつの問題についてじっくりと考えることができる。
たくさんの表現方法が生まれなお、絵画を選択するのはこのためだ。
 私は架空の風景や場面を描いているが、描いた際のブレや歪み、滲みなど、それだけでは目に止まらないものを、風景という形を借りて可視化したいと考えている。
そこで大切にしているのは、何か「絶対的」な美を提示するのではなく、「仮定」を作品の構造に組み込むことである。
なるべくシンプルに、何をしようとしているのかを明らかにした上で作品を見てもらいたい。
 わかりやすい例を挙げると、2016年制作の「effect」この作品は、6枚のキャンバスをつなぎ合わせ、キャンバスの角や切れ目から形を導き出すという、とてもシンプルな構造である。タッチの方向も一定であり、どうしても難しい場所のみタッチを変えている。
グラデーションは筆の動きをみてもらうためにつけてあり、色彩も最小限である。成り立ちがそのまま道のイメージ(像)となっているため何も隠されていない。
何も隠されていないということは、その秩序から少しでもはみ出た説明のつかない部分が見えやすくなるということであり、好きに解釈してよい余地が現れるということでもある。
 私自身、制作者であり一番の鑑賞者であるので、そのような余地を見たく制作を続けている。何か特別なことをしなくとも、自然と滲みでてくるようなものを大切にしている。

2017
3月 (ホルベインスカラシップACRYLART別冊2017 アーティストステートメントより)